【ニット・セーターの洗濯】
洗濯機 or 手洗い?
洗い方から干し方まで徹底解説!
ニット・セーターを洗濯したいときは、まず素材をチェックしよう!
普段、何気なく使っている「ニット」「セーター」という用語ですが、同じ意味で使っていませんか? 実は、まったく別のことを意味しています。
「ニット」は、1本の糸でループを作りながら編んだ生地のこと。「セーター」はニット生地で作られたトップスのこと。「セーター」=「ニット」というのが一般的になっているため混同しがちですが、「ニット=素材」、「セーター=衣類」を指します。つまり、「ニット」にはプロオーバー、カーディガン、ワンピースなどの衣類からニット帽・ビーニー、マフラー、手袋などの小物類まで、さまざまな種類があるということです。
では実際にニット素材のアイテムや手編みのセーターが自宅で洗えるのかどうか、毛糸の種類とその特徴を確認していきましょう。
ウール、カシミヤ、モヘア、アルパカなどの動物由来のニット
ウール(羊毛)……秋冬の代表的な素材。弾力性がありシワになりにくく、吸湿性、保温性に優れている。
カシミヤ……カシミヤヤギの毛。上品な光沢と柔らかな風合いが人気で、高級感がある。繊維が非常に細かいため、肌を刺激せず、しなやかで滑らかな肌触りに。
アンゴラ……アンゴラウサギの毛。非常に繊維が細く、手触りも滑らかで軽くて暖かい。ウールの3倍の保温性があるともいわれ、ムレにくい。アンゴラヤギの毛は、「モヘヤ」と呼ばれ、毛足が長く、光沢があり美しい。
アルパカ……とても軽く、温度調整機能が高い。カシミヤ同様、高級感があり、滑らかな肌触りで着心地がよい。毛玉ができにくく丈夫なので、取り扱いもしやすい。
コットン(綿)、シルクなどの植物由来のニット
コットン(綿)……丈夫で吸水性が抜群。チクチクしたりかゆくなったりしにくく、肌触りがよい。洗濯機で洗えるものが多い。
シルク……吸湿性、通気性、保温性が高く、光沢感があり、軽くてしなやか。デリケートな素材なので、自宅で洗うなら手洗いがベター。
アクリル、ポリエステル、レーヨンなどの化繊素材のニット
アクリルやポリエステルなどの化学繊維は、コスパのよさと素材の強度が魅力。縮んだり型崩れしにくく、洗濯機で洗えるものが多い。
自宅での洗い方 お気に入りを縮ませないために、洗う前にやるべきことは?
家で洗いたい! とはいえ、うっかり洗濯方法を間違えると、大切な1枚が縮んでしまうことも。がっかりしないためにも、洗濯前にやるべきことを紹介します。
洗濯表示を確認して、洗濯方法を決めよう
まずは、必ず洗濯表示をチェック! 「洗濯桶マーク」「手洗いマーク」が表示されていれば、家庭で洗濯可能です。「×」表示がある場合は水洗い不可なので、自宅での洗濯は避け、クリーニングへ持って行きましょう。「洗濯桶マーク」の中の数字は水の温度の上限、下の横棒は水流の強さを表しています。横棒はなし・1本・2本の3段階表示で、本数が多いほど弱い水流でやさしく洗うことを意味しています。
色落ちすることがないかチェック!
さらに、タグの注意書きを確認して、個別に洗うか、同系色のものはまとめて洗うか判断しましょう。特に白いセーターは他のものからの色移りにも注意! 心配なら、個別に洗った方が安心です。色落ちするかは、目立たない部分におしゃれ着用洗剤を1滴たらし、5分放置してから洗い流して確認しましょう。
水洗い不可の場合は、無理せずクリーニングを検討してみて
自宅で洗濯してみたものの、失敗してお気に入りの1着を台無しにしてしまってはショックですよね。洗濯桶マークに「×」が表示されていたら、洗えないものと思って。無理に自分でお手入れせず、クリーニングに持って行き、プロの手に頼ることも大切です。
洗剤は、おしゃれ着用洗剤を使うのが鉄則!
自宅での洗濯がOKであれば、次に「洗濯機」「手洗い」に仕分けします。洗剤は必ずおしゃれ着用洗剤を使いましょう。一般的な洗濯用洗剤は弱アルカリ性ですが、おしゃれ着用洗剤は中性です。洗浄力という面では少し劣ってしまいますが、繊維を傷めずに洗うことができます。またシャンプーなどと同じようなシリコンが配合されているので、縮みを防いで生地へのダメージを和らげながらやさしく洗ってくれます。
ニット・セーターの洗濯機での洗い方
タグに「洗濯桶マーク」が表示されていれば、洗濯機で洗うことが可能です。早速、洗い方をチェック!
【1】汚れている部分におしゃれ着用洗剤を直接塗布して、 裏から叩く
襟や袖口などにシミや汚れがある場合は、おしゃれ着用洗剤を直接塗りましょう。特に目立つ汚れがある場合は、ブラシでトントンと叩くと汚れが落ちやすくなります。このときのポイントが、汚れた部分の裏側から叩くこと。よく汚れた部分をトントン叩きがちですが、そうすると汚れを繊維の中に押し込んでしまいます。汚れた側に汚れを叩き出すイメージで生地をひっくり返して、汚れた部分の裏側から叩くようにしましょう。注意点として、絶対にこすらないこと! ブラシでこすると毛玉ができる要因になるので、あくまで叩くように。
【2】ニット・セーターを裏返し、必ず畳んで洗濯ネットに入れる
部分洗いが終わったら裏返して、洗濯ネットの大きさに合わせて畳んで入れましょう。特に、シャギーニットなどの毛足が長いものや厚手のものは必ず裏返して。汚れが気になる場合は、汚れが外側にくるように。
またシャギーニットや厚手のものは、洗う前の準備として、洋服ブラシでブラッシングするのがおすすめ。汚れやほこりが落ちやすくなります。ボタンやジップ付きのカーディガンやベストなどは、ボタンやジップをすべて閉じてから畳んで洗濯ネットへ。
1つの洗濯ネットに入れるのは、1枚のみに。同じ洗濯ネットに何枚も入れると、しっかり洗えません。また洗濯ネットが大きすぎるとニット・セーターが洗濯ネットの中で動いてしまい、摩擦が起きて毛玉の原因になるのでサイズ選びに注意しましょう。
【3】中性のおしゃれ着用洗剤を使用! 柔軟剤を使うのもおすすめ
おしゃれ着用洗剤と一緒に、柔軟剤を併用すると静電気を防ぎ、ふんわり柔らかな仕上がりに。洗濯用洗剤だけで洗うよりも速く乾くので、部屋干しのイヤな臭いも防げます。最近は消臭・防臭、抗菌効果のある柔軟剤もあるので、お好みのものをチョイスして。
【4】ドラム式でも縦型でも、洗濯コースは標準ではなく弱流水のコースを選択
洗濯桶マークに横棒がなく標準コースで洗える表示であっても、ニットはデリケートな素材です。型崩れ防止、毛玉防止、風合いよく仕上げるために、「おしゃれ着コース」「ドライコース」「おうちクリーニングコース」などの弱流水コースを選びましょう。
また摩擦を予防するために、一度に洗う量は薄手のニットなら3枚まで、厚手のニットなら2枚までと心得て!
ニット・セーターの手洗いでの洗い方
手洗い=めんどうくさい、と感じるかもしれませんが、ニット素材にとっては一番ダメージが少ないのが手洗いです。簡単な手順なので、大切なものこそ丁寧に手洗いしてみませんか? 型崩れしやすいニット帽・ビーニーも手洗いがおすすめです。
【1】洗剤液を作る。目立つシミや汚れがあったら、部分洗いを
洗面器などにぬるま湯とおしゃれ着用洗剤を入れ、よく混ぜて洗剤液を作ります。水温は洗濯表示に沿った温度設定に。ニット素材は30℃と表示されているものが多いですが、冬場だとヒヤッと冷たく感じるくらいが目安です。心地いいなと感じると40℃くらいなので、温度計がない場合は肌感覚に頼ってOK。
洗濯機洗いと同様に、目立つシミや汚れがある場合は、先に部分洗いをしましょう。手順も同じで、シミや汚れにおしゃれ着用洗剤を直接塗布し、裏からブラシで叩いて汚れを落としやすくします。
【2】裏返したニット・セーターを洗剤液に沈めて、やさしく押し洗い
ニット・セーターを裏返してから畳み浮いてこないように静かに洗剤液に沈めていきます。摩擦に気をつけながらやさしく押し洗いします。目安は5~6回。上下を返して、同様に5~6回やさしく押し洗いします。
【3】洗剤の泡が出なくなるまで、2回以上すすぐ
汚れが浮いてきたらぬるま湯を入れ替えて、押し洗いと同じ要領で洗剤の泡が出なくなるまで、2回以上すずきます。このとき、絶対に絞ったり、揉んだりしないように。静電気防止、消臭・防臭のために柔軟剤を入れる場合は、すすぎが終わった後、一番最後に入れましょう。浸した後のすすぎは必要ありません。
【4】バスタオルにくるんで脱水。洗濯機で軽く脱水してもOK
すすぎが終わったら(柔軟剤を入れた場合は、すすがない)、セーターをバスタオルでくるんでいきます。イメージは巻き寿司! くるくると包んで、残っている水分をしっかり吸い取ります。これが、一番生地を傷めにくい方法です。薄手のセーターならバスタオル1枚、厚手の場合は水分をたっぷりと含んでいるのでバスタオル4枚くらい必要になります。このとき、洗濯機で軽く脱水してもOK。必ずネットに入れて、15~30秒程度、脱水します。バスタオルにくるんだ状態で洗濯ネットに入れるので、サイズに合った洗濯ネットを用意しましょう。
また厚手のセーターをドラム式で脱水する場合は、毛玉ができないような使い古したバスタオルなどを一緒に入れることをおすすめします。その理由は、厚手のセーターだけだと、個体が重すぎで遠心力が働かず、ちゃんと回転しないから。別のものを一緒に入れることで、よく回転してしっかり脱水できます。縦型は単体で回してOKです。
キレイをキープする干し方のポイントは?
実は干し方も、仕上がりを左右する大事なポイント! ひとつずつチェックしていきましょう。
乾燥機は基本的に使わない直射日光が当たらない陰干しが◎
ニット・セーターは伸び縮みしやすいため、乾燥機の使用は縮みの原因になり得ます。冬だと太陽の光もそれほど強くはないですが、直射日光が当たると退色&縮みの原因になるので陰干ししましょう。
キレイに仕上げるなら、平干し用ネットがイチ押し!
ニットを干す際は、平らに広げて置ける平干し用ネットが必需品。生地が伸びる心配がないうえ、風通しがよいので置いたままでOK。途中で上下を返す手間がなく、これ一択! といっていいほど便利です。100均でも購入できるので、持っていない人はぜひ試してみて。
どうしてもハンガーで収納したい場合は、重さが分散するように工夫して
畳んでしまうのがベストですが、ハンガー収納したい場合は、袖部分をクロスさせてハンガーにかけると比較的シワになりにくいです。ワンピースやロングカーディガンなど着丈の長いものは、重みで袖や裾が伸びて型崩れの原因になるので、複数本のハンガーを使ってなるべく重さが分散するように工夫しましょう。
使うハンガーの幅も重要。肩にハンガーの跡がつく可能性があるので、薄手のニットには幅の狭いハンガーを、厚手のニットには幅の広いハンガーを使うのがベター。
ニット・セーターを洗う頻度はどれくらい?
着用頻度にもよりますが、毎回洗うのではなく、シーズン終わりの衣替えの時期に1回と、汚れが気になるときぐらいでOK。洗濯回数が増えるほど、生地が傷んだり縮んだりする可能性があるからです。
洗う回数を控える分、普段のお手入れにひと手間を加えると、キレイをキープできます。1つ目が、洋服用のブラシでブラッシングすること。特に厚手のニットや毛足が長いシャギーニットなどは毛並みがよくなります。2つ目が毛玉取り。専用の毛玉取り機で、毛玉ができやすい脇や袖口周辺をケアしましょう。クローゼットにしまうときは、しっかり乾燥させて防虫対策も忘れずに!
最近は自宅で洗えるウォッシャブルセーターがいろいろ登場しています。お気に入りの一枚を見つけてみて!
PROFILE
平島利恵さん
洗濯研究家。洗濯洗剤・布ナプキン・布おむつのブランド「Rinenna」(リネンナ)を立ち上げ、“毎日の不快な作業を快適に”をモットーに、洗濯をもっとラクに楽しくするお役立ち情報を発信している4児のママ社長。著書に『選択を見直すだけで人生が変わる! 新・お洗濯メソッド』(KADOKAWA)がある。
※モデルおよび写真画像の商品は一部欠品および品薄になっている場合があります。あらかじめご了承ください。